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『せかいのおきく』はなぜ見るべきか？映画の魅力と見どころを紹介

2023年4月28日に公開された映画『せかいのおきく』は、黒木華が主演を務め、寛一郎と池松壮亮が共演した、阪本順治監督のオリジナル時代劇です。本作は、江戸時代の先進的な循環型社会を背景に、貧しいながらも生きる喜びと輝きを感じる庶民の姿を描いています。モノクロの映像で美しく表現された物語には、声を失ったヒロインの感情表現や、糞尿を売り買いする仕事にもめげない若者たちの青春が詰まっています。この記事では、映画『せかいのおきく』の魅力と見どころを3つずつご紹介します。

映画の魅力

• モノクロの映像美

本作は、モノクロの映像で撮影されています。これは、監督の阪本順治の狙いによるものです。阪本監督は、モノクロの映像は、色彩を感じられる我々にとっては現実にはあり得ない世界であり、フィクションであると言います。そのため、モノクロの映像は、人物の感情表現を敏感に感じ取れるという効果があると考えています。また、モノクロの映像は、江戸時代の墨絵のように美しく、日本の伝統的な美意識を表現しています。モノクロの映像は、本作の物語に深みと重厚さを与えています。

• 声を失ったヒロインの感情表現

本作のヒロインであるおきくは、ある事件によって声を失ってしまいます。しかし、それでも彼女は、中次に想いを伝えようとします。声を失ったおきくの感情表現は、演じる黒木華の名演によって見事に表現されています。黒木華は、セリフのない役柄に挑戦し、身振り手振りや表情で、おきくの心情を伝えています。声を失っても、人と繋がろうとするおきくの姿は、観る者の心に強く響きます。

• 循環型社会のメッセージ

本作は、先進的な循環型社会を実現していた江戸時代を舞台にしています。江戸時代は、資源が限られていたからこそ、使えるものは何でも使い切り、土に戻そうという文化が浸透していました。人間も死んだら土に戻って自然に帰り、自然の肥料になるという考え方がありました。本作では、糞尿を売り買いする中次と矢亮の仕事が、その循環型社会の一端を示しています。糞尿は、汚いものとして捨てられるのではなく、農家に売られて堆肥として使われていました。また、紙屑拾いの中次は、捨てられた紙を拾って再利用していました。本作は、現代の環境問題にも通じる、循環型社会のメッセージを伝えています。

映画の見どころ

• おきくと中次の恋物語

本作の中心となるのは、おきくと中次の恋物語です。おきくと中次は、雨の日に厠のひさしの下で出会います。おきくは、中次の紙屑拾いの仕事に興味を持ち、彼の読み書きを教えることになります。中次は、おきくの優しさに惹かれていきます。しかし、おきくはある事件に巻き込まれて声を失ってしまいます。それでも、おきくは中次に想いを伝えようとします。おきくと中次の恋物語は、言葉ではなく、心で通じ合うという、純粋で切ないものです。おきくと中次の恋の行方に注目です。

• 長屋の住人たちの人間模様

本作では、おきくや中次と矢亮が暮らす長屋の住人たちの人間模様も描かれています。長屋の住人たちは、貧しいながらも生き生きと日々の暮らしを営んでいます。彼らは、おきくや中次と矢亮を応援したり、助けたり、からかったり、喧嘩したり、仲間として接しています。長屋の住人たちには、日本映画を代表する名俳優たちが集まっています。佐藤浩市、眞木蔵人、石橋蓮司などのベテラン俳優たちが、長屋の住人たちの個性や魅力を見事に演じています。特に、佐藤浩市演じる孝順は、おきくの父親でありながら、中次と矢亮に厳しくも優しく接する、長屋のリーダー的存在です。孝順の言動は、時には笑いを誘い、時には涙を誘います。

• 阪本順治監督の演出力

本作の演出を手がけたのは、『顔』『北のカナリアたち』などの阪本順治監督です。阪本監督は、本作が初めてのオリジナル脚本だということもあり、自身の思いを存分に映像に込めています。阪本監督は、本作を「青春映画」と呼んでおり、おきくや中次と矢亮の若さと希望を感じさせるシーンが多くあります。例えば、おきくが中次に読み書きを教えるシーンでは、おきくが中次の手を取って文字を書く仕草がとても愛らしく、二人の距離が縮まる様子が伝わってきます。また、中次と矢亮が海に行くシーンでは、二人が初めて見る海の美しさに感動し、波に飛び込む姿が爽やかで、自由を象徴しています。阪本監督は、モノクロの映像に色を添えるように、おきくや中次と矢亮の青い春を描いています。

映画『せかいのおきく』は、モノクロの映像で江戸時代の庶民の暮らしを描いた時代劇です。主演の黒木華は、声を失ったヒロインの感情表現に挑戦し、見事な演技を見せています。共演の寛一郎と池松壮亮も、糞尿を売り買いする仕事にもめげず、希望を持って生きる若者たちを演じています。長屋の住人たちの人間模様も楽しく、名俳優たちの演技が光ります。監督の阪本順治は、本作を自身の初めてのオリジナル脚本として、青春映画として演出しています。本作は、貧しくもたくましく生きる人々の姿を通じて、人と人のぬくもりや循環型社会のメッセージを伝える作品です。